「広告はわかるけど広報って何やっているの?」
■セールスライティングとリリースライティング
「押しの強い売り込み型コピーのライティングで経験を積んできたライターにとって、ソフトタッチな広報資料は、慣れるのに少々時間がかかる」と先日も紹介した「セールスライティング・ハンドブック」にあります。
プレスリリースの作成経験は長くても、セールスライティングの経験がほとんどない筆者にとって、逆の作業も慣れが必要に思います。両者は似て非なるものだからです。
広告だと許される露骨な表現や誇張、そして過度な修飾語はどれもリリースではご法度。そのような表現が少しでもあると、記者や編集者にリリースを読み進めてもらうことはあきらめたほうがいいでしょう。
前述の本によれば、「人は、広告に対しては本能的に懐疑的であるが、新聞やテレビで読んだり聞いたりしたことは、ほとんどすべて信じるように習慣付けられている」とあります。
新聞やテレビ、あるいはポータルサイトでもいえることですが、「今朝、どのような広告が掲載されたり、CMで流されたりしたか覚えていますか?」と質問されて、正確に答えることは容易ではありません。毎日のように見ているYahoo!のトップ画面の右上の広告枠ですら、ほとんど印象に残らない。しかしニュースなら大体覚えている。
本では続けて、「自分たちが見たり聞いたりしているニュースの大半は、プレスリリースをベースにしたものであり、そのプレスリリースは、広告やCMを流しているものと同じ企業が出しているものだという認識はない」とも。
■「広告は知っているけど広報って何やっているの?」
リリースそのものの認知度、さらにいえば広報活動の結果として、ニュースが報じられているという事実すら世間一般の認識は低いと思うことがあります。その代表的なものが、「広告はわかるけど広報って何やっているの?」という反応。
広告はメディアの枠を買って、自分たちの好きなように表現することができます。反面、広報ではリリースが掲載される保証はまったくない。取り上げられなければ、ただの紙くずです。
掲載するしないは、もちろんメディア側の判断しだい。全国紙と専門紙では違いますが、大きな効果や影響が得られることも少なくない。しかも広告に比べたコストは段違いに低い。これが大きな特徴です。
「メディアの枠を有償で得るか、無償で得るか」。一言で言えば、それが広告と広報の違いです。もちろんそれぞれメリットもデメリットもある。だから二つをうまく組み合わせることが成功の秘訣です。