「ローリング・ストーン」の米英の解釈の違い
■「転石苔むさず」の米英での解釈の違い
4月6日付の朝日新聞「ことばの広場 ー校閲センターから」というコラムのテーマが「ローリング・ストーン」。思わず目を惹かれるテーマでした。ボブ・ディランの代表曲の一つが"Like a Rolling Stone"だし、そして結成から50年を超えてなお、第一線で活躍するローリング・ストーンズの一ファンとして。
英語のことわざ"A rolling stone gathers no moss."(転石苔むさず)。イギリスとアメリカで解釈が違うことを、このコラムで知りました。記事によれば、イギリスでは「しばしば商売(住居)を変える人は金がたまらない」の意。一方アメリカでは、「絶えず活動している人はいつも清新だ」という意味に用いるのだと。
「石の上にも三年」ともいうように、筆者などは前者の意味として理解していましたが。背景には伝統的な価値観を重んじるイギリスと、進取の気性に富むアメリカとの違いにあるようです。
そういわれると、ローリング・ストーンズのバンド名の由来は、アメリカのシカゴブルースの大御所のマディ・ウォーターズの”Rollin’ Stone”という曲をヒントに、早逝したメンバーのブライアン・ジョーンズが命名したもの。"Like a Rolling Stone"は言わずもがな。どちらも「アメリカの解釈」がベースにあることが推測できます。
子供のころに、木陰の石に生えていた苔を踏んで、親に怒られたことがあります。その頃はなぜ怒られたのか理解できませんでしたが。京都の世界遺産の一つでもある西芳寺が別名、苔寺と呼ばれるように、日本庭園の様式美に苔は欠かせないもの。「君が代」にも「苔のむすまで」という一節もあります。やはり、日本では「イギリスの解釈」が一般的です。
■校閲の仕事
このコラムは記者ではなく、校閲センターの人が書いたものです。校閲って新聞の制作過程ではあまり知られていない部署だと思います。デスクの確認を終えた原稿は、レイアウトを預かる整理部で見出しがつけられますが、同時並行で内容に誤りがないかをつぶさにチェックする。これが校閲の役割です。
誤字脱字の大半はデスクの時点で直されます。これは校正といわれる作業です。一方、校閲は、書かれていることが本当にそうなのかという点を掘り下げます。文章表現がふさわしいかを検証するということ。
「ローリング・ストーン」のように解釈の違いがある場合、それを放置せずに踏み込むという、粘り強さが校閲には必要だ、ということをコラムを読んで感じました。