公平な対応が記者の信頼を生む
■公平な対応が信頼を生む
取材などの扱いで他社と差をつけることを記者は忌み嫌います。広報担当者と接点の多いのは新聞や雑誌、そしてウェブ媒体ですが、あからさまに対応に差をつけると手痛いしっぺ返しを食らうことになります。
企業の担当記者が他紙を読んだ時に、A社の社長インタビューが出ていたとします。自分も取材を申し込んでいたのに、「多忙なのでしばらく対応が難しい」と断られたばかりだったとしたら、A社に対する印象は一気に悪くなってしまうはずです。記者が「A社でこんな対応をされた」ことを決して忘れることはないし、記者仲間に愚痴ることもあるでしょう。
新社長が就任した後に個別に行われるようなお決まりのインタビューでは、「代わりを務める人がいない」。もし、こういうことがまかり通ってしまったら、広報担当者へのクレームは相当なものになるはずだし、「二度と取材するか」と怒らせることになります。
とはいえ、社長の体は一つしかないので、いくつも社長へのインタビューの申し込みがあれば、インタビューの目的や掲載イメージなどはもちろん、その媒体の影響力の大きさ、そして社長と記者との相性など様々なことを勘案しながら、対処法を決定するのも事実です。広報担当者としては、当然抑えておくべきことです。
しかし、あくまでそれは内向きの話。リクエストのあったところを、公平というスタンスが大前提です。
■社長じゃなければいけない理由の有無
「社長を出すか、出さないか」を判断するうえで重要なのは、「社長じゃなければいけない理由」を記者と十分共有できているかどうかです。記者の立場なら一国一城の主である社長に話を聞きたいのはごく自然なこと。
しかし、取材依頼があったからといって、何でもかんでも社長にお願いするのは賢い対応ではありません。もちろん、さばききれるならそれに越したことはありませんが。
例えば特定事業について掘り下げて聞きたいのなら、どうしても社長じゃなければいけないということはないはず。そこで、「○○事業について取材したいのでしたら、担当役員で調整させていただいてもよろしいでしょうか」と記者の了解を取り付けるのがいいでしょう。
社長に会いたいと記者がリクエストするのは、ある種「あいさつ代わり」の面もあります。多くの場合、「会社を代表して責任を持った受け答えができる人」を取材対象として求めていることが多く、「どうしても社長じゃなければ」ということは必ずしもありません。
そこを理解して、記者とうまく折り合いをつけながら、対処するのが、信頼される広報パーソンへの第一歩です。