広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

(今更ながら)「PRプランナー」の資格試験(一次)を受験した

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■PRプランナーの一次試験

 PRプランナーの一次試験を先日始めて受験しました。二十数年もの間、広報周りの仕事をしているので、「何をいまさら」とこれまで敬遠していましたが、会社の勧めもあって受けてみることにしました。もちろんひやかしのつもりはなく、受かることを前提にしてですが。

 とはいえ、それなりの知識や実務経験があるという意識が邪魔をして、勉強に身が入らなかったのも事実だし、「一次試験の合格率が75%だから大丈夫」と高をくくっていたところもあります。真剣に取ろうと思っている人には甚だ失礼な話ですが。

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■公式テキスト・参考図書は必ず読んでおく
 勉強法などと大仰なことを披歴することはできませんが、感じたことを書いておきます。まず、何よりも事前に公式テキスト(あるいは参考図書)を読んでおくことは怠らないほうがいいでしょう。安く済まそうと、市内の図書館で公式テキストを探しましたが、置いているはずもありません。やむを得ず、同じタイミングに受験する人のテキストを一週間ほど借りて読みました。

改訂版 広報・PR概論


 併せて参考図書に指定されている「広報・パブリックリレーションズ入門」や「パブリック リレーションズ」は図書館にありました。いずれも通勤時間(行きは新聞を読むので帰りだけですが)などに、他の本を読みたいのを我慢して向き合いました。

広報・パブリックリレーションズ入門 (基礎シリーズ)

パブリックリレーションズ 第2版 戦略広報を実現するリレーションシップマネージメント

 

 どちらの本も専門書独特の「とっつきにくさ」はありません。比較的平易な内容なので、広報担当者ならPRプランナー試験とは切り離しても、読んでおいたらいいと思います。

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■問題形式を知っておく
 主催者の日本PR協会のサイトに参考問題が掲載されていますので、事前にチェックしておいた方がいいです。4つ以上の選択肢から「もっとも適切なもの」あるいは「もっとも不適切なもの」を1つ選ぶという問題の出し方が大半であることがこれでわかります。念のため、過去問のテキストも人から借りて一読しましたが、一次試験の段階では、わざわざ買うこともないような気がします。


 同サイトによれば、一次試験にはこれまで9千人以上がチャレンジして、7千名を超える合格者がいます。また、三次試験を経て、晴れてPRプランナーになれた人は全国で約2500人(2018年1月受験者までの累計)います。今年で資格ができて10年になるのだとか。

 

 一次試験に受かると「PRプランナー補」、二次に受かると「准PRプランナー」。どちらも別途申請手続きが必要です。いずれにしろPRプランナーになるにはもう少し時間がかかりそうです。(苦笑)

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通訳案内士試験の大幅難化がもたらす弊害

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■「『全国』通訳案内士」とは

 有料で通訳案内業務を提供するのに、本年1月から資格が不要になりました。増加を続ける訪日外国人観光客の受け入れ環境の整備を図る一環とされています。「そもそも資格なんか必要だったの?」と思う人が多いでしょうが。

 その資格というのが通訳案内士です。れっきとした国家資格ですが、このたび業務独占が崩れ、資格の名称も「『全国』通訳案内士」と改められました。つまり、誰でもその気になれば有料で通訳兼ガイドをやれるようにはなりましたが、バックグラウンドのないガイドは「信用」という点では資格保有者に比べて大きく劣ることになります。

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 通訳ガイドが足りないのなら、業務独占を維持しつつ、資格要件を緩くして保有者を増やす機会を増やせばいいと思います。しかし、そうはなりませんでした。2018年度以降の通訳案内士試験は現行の四科目(言語、日本歴史、日本地理、一般常識)に通訳案内の実務の科目が新たに三つ加わるようです。

 

 しかも筆記試験の免除の要件も厳しくなります。例えば英語ではTOEICが840点以上でこれまでは免除されましたが、これが900点以上に引き上げられます。しかも試験から1年以内の取得に限られます。受けたことがある人にはわかりますが、TOEICの840点と900点ではかなり違います。少なくとも私には無理です。。

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■試験の難化がもたらす弊害
 試験の詳細は今後の観光庁の発表を待たなければなりませんが、新たに加えられるのは「旅程の管理に関する基礎的な項目・関係法令に関する基本的な知識」、「外国人ごとのの生活文化への対応」そして「危機管理・災害発生時における適切な対応」の三科目とされます。これはこれで必要な知識なのでしょうが。ちなみに受かった人もこれらの内容の研修を受けることが義務付けられました。

 

 スキルの高い通訳案内士を輩出するなら必要な知識であることは理解できます。ならば、最初からそうすべきでしょう。途中から大きく試験内容を変えるのは、いかがなものかと思います。難化前に受かったからと手放しで喜ぶ気にはなれない「改悪」です。

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 これから目指そうと考える人たちには何とも気の毒な試験の見直しです。そもそも通訳案内士の資格はせっかく取れてもそれだけでは残念ながら「食えません」。観光庁が行った「通訳案内士の就業実態等について」によれば、実に76%の人が通訳案内士としては未就業です。専業として身を立てている人は6%にとどまります。また、資格取得の動機も「就業するため」(54%)を抑えて「語学力を証明するため」(63%)が第一位でした。

 

 今回の難化で志半ばであきらめてしまって、さらになり手が減ってしまうんじゃないかと危惧します。せっかく2020年という追い風があるのに。

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「消極的な相手の意識を変える」ことの難しさ

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■対外的な広報活動における四本の串

 対外的な広報活動は縦串と横串に二本ずつの四本の串によって成り立っています。縦串をさすものとして商品広報(あるいはマーケティングPR)と企業広報(あるいはコーポレートPR)があります。そして、横串をさすものとして平時広報と有事広報(あるいはクライシスコミュニケーション)があります。

 言うまでもありませんが、商品広報は自社の商品やサービスを多くの人に知ってもらうことで、ひいては売上を伸ばすことを目的にしています。一方、企業広報は企業の経営方針や戦略を伝えることで、自社そのものの認知度を高め、ひいては信頼感や良好なイメージの醸成を図っていくことを目指します。

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 これらは平時広報と位置付けることができます。さらに、企業や商品のレピュテーションがネットの投稿ひとつで大きく傾いてしまうことがある昨今では、「平時における有事の備え」の重要性も増しています。これをしておかないと有事広報で苦労することになります。

 自社の業態がB2BなのかB2Cなのか、あるいはどのステークホルダーにどのようなメッセージを伝えたいのか、どのような行動を相手に起こしてほしいのか、といった要素でとるべき広報戦略は変わってきますが、どちらもバランスよく行っていかなければなりません。

■広報担当者と連続スペシャリスト
 以前、本ブログで「広報パーソンこそ連続スペシャリストへシフトすべし」と書きました。「ワークシフト」(リンダ・グラットン著、2012年)では、ゼネラリストを「広く浅い知識や技能を蓄える」ものと定義し、これから脱却して「専門技能の連続的習得者への抜本的な〈シフト〉を遂げる必要がある」と述べています。

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 長く広報担当者として活躍したいなら、それぞれの串を竹串からステンレスの串にしなければなりません。本には、「多くの分野について少しずつ知っているのではなく、いくつかの分野について深い知識と高い能力を蓄えていかなければならない」と書かれています。

■「消極的な相手の意識を変える」
 以前、広報活動にあまり熱心でない企業に平時広報の強化を提案したことがあります。広報の重要性はいろんな場で語られるようになり、経営に不可欠なものという認識が定着しつつありますが、中にはそうでない企業もあります。

 広報活動に消極的な理由は様々でしょうが、その会社の担当者曰く「でしゃばらないという先代の教えを守っている」と。多くの人が知っている知名度の高い企業ですが、その割にマスコミへの露出機会が極端に少ないというデータを示しながら、「もっと平時広報を充実させましょう」と提案しました。

 

 残念ながら、興味を持っていただくことはできませんでした。広報担当者の時に、「同業他社をいたずらに刺激したくない」と取材対応を断られることが何度かありましたが、それに近い印象を持ちました。

 広報活動を行う三大効果として、「①シンパシーやロイヤリティの醸成 ⇒ 社会全体」、「②ビジネスチャンスの拡大 ⇒ 消費者や取引先」、「③モチベーションの向上 ⇒ 社内」があります。

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 出しゃばらずに控えめであることは、日本人の美徳とされているところもあります。そう考えると、広報における連続スペシャリストを目指すには「消極的な相手の意識を変える」ことが、実は永遠の課題なのかもしれません。広報だけの課題でもありませんが。

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