広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

通販大手の倉庫火災は模範事例になり損ねた失敗事例

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■危機管理広報の模範事例

 危機管理広報の模範事例として広報担当者の間で知られているとおもうのは、米J&Jのタイレノール事件と参天製薬の脅迫事件、そしてアルジェリアで起こったテロ事件での日揮の対応です。

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 三社ともスピード感をもって事態に対処しました。「企業がどんなに気をつけていても、ブランドに危機は訪れるものだ。企業はコントロールできるものは、危機が発生した時にどのように対応するか、その意思決定の部分である」と以前読んだ「あのブランドの失敗に学べ」にありますが、それを実践しています。

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■模範事例になり損ねた失敗事例

 最近起こったアスクルの埼玉県にある物流拠点で発生した火災もひょっとしたら模範事例になった「はず」でした。2月16日9時ごろに発生し、12日後の28日に鎮火しました。幸いけが人はありませんでした。

 

 ちなみに火災には火の勢いが収まった状態を指す「鎮圧」というのもあり、これは報道によると22日でした。火の勢いが倉庫内という環境下で一週間近く収まらない状況だったということになります。

 

 同社の岩田彰一郎社長が鎮圧を受けてマスコミの前に現れ、謝罪を行いました。プレスリリースは火災当日や鎮圧の日を含め、3月14日の「第13報」まで火災の状況をプレスリリースとして発表しました。2月19日には2度行っています。これらのリリースの中で、前回報告時からの変化点が一目でわかるようになっています。

 

 リリースには「近隣にお住まいの皆様をはじめ、多くのお客様、お取引先様、関係者の皆様にご迷惑、ご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます」と書かれています。多くのステークホルダーがいる中で、お詫びの優先順位への配慮がうかがえます。

 

 3月9日に改めて社長以下が記者会見を実施、報道によると「東京ドーム1個分にあたる約4.5万平方メートルが焼損したと。けが人がなかったことが幸いしましたが、情報を随時更新し、マスコミに情報提供を欠かさない姿勢は見習うべきものがあります。ブランドの危機が迫る中で、「意思決定の部分はコントロールできていた」と感じます。

 

 3月16日に予定していた決算発表を4月5日に延期して開かれた決算説明会で火災による101億円の特別損失の計上を発表しました。ここまでの対応は模範事例となりうるものでした。

 

 ところが、そのわずか2日後に、「倉庫で保管していたスプレー缶など可燃性のある危険物の総量が基準を超えていた疑いがあるとして、アスクル本社(東京都江東区)などを消防法違反容疑で家宅捜索した」と報道されてしまいました。

アスクル本社を捜索 倉庫火災巡り :日本経済新聞

 

 残念ながら、模範事例になり損ねた失敗事例として記憶に残りそうです。

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社員のロイヤリティを高め、会社のPRにもつながるまたとない機会

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■入社式に想う

 新年度入りして初めて会社に行く日となった4月3日、多くの企業で入社式が行われました。朝日新聞の翌日の紙面では、登場順に電通東海東京フィナンシャルホールディングス、丸紅、ニコントヨタ自動車東芝の様子が紹介されました。

www.asahi.com

 

 業績悪化で新規採用がなかった東芝を除き、各社の社長の訓示が紹介されました。写真は3点ありました。紙飛行機を飛ばして飛躍を誓う姿を撮った日本航空グループ、仕事は「オン」と「オフ」の切り替えが大事だとして「点灯式」の様子を撮った東海東京フィナンシャルホールディングス、そして先輩が新入社員に鉛筆の削り方を指導する姿を撮った三菱鉛筆です。

 

 この時期になると例年感じることですが、「広報素材としてこのタイミングを活用しない手はない」ということ。多くの会社で入社式をマスコミに公開したり、社長の訓示をリリースにして配信したり、といったことが行われています。

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 この機会をとらえてユニークな入社式を行い、それがマスコミの関心をひいて取り上げられるケースもあります。

 

 例えば、「新入社員自身が企画した運動会(外資系自動車部品メーカー)」、「水中入社式(鳥羽水族館)」、「普段披露宴を行う会場で、新入社員を新郎新婦に見立てて祝福(静岡県冠婚葬祭会社)」、「新入社員の家族との思い出の写真と親からの手紙をサプライズ披露(島根県IT企業)」などのように。ちょっとサーチしただけでも、興味深い入社式がいくつもあります。

 

■サプライズ入社式

 他にも航空会社のスカイマークは「空飛ぶ入社式」と銘打って、羽田空港の格納庫に駐機したボーイング737の機内で入社式を実施したそうです。しかも新入社員には事前の予告なしに離陸し、琵琶湖上空で折り返すという粋な演出までついたそうです。字前述の島根県のIT企業もそうですが、こうした場でサプライズというのは、自分が入った会社に対するロイヤリティを高める効果があると思います。

www.sankei.com

 

 社員のロイヤリティを高め、会社のPRにもつながる。そんな効果が入社式にはあると思います。どちらも意識していない人事部門の方には、改めて考えてほしいことです。

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 一人の父親として初めて子供を社会人として世に送り出しました。その誕生から20数年の間にいろんなことがありました。親の役目とは子供の自立をサポートすることなのだと、自分自身のずいぶん前の入社式を重ねながら感じます。

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プレゼンを相手に届けるには「体験を語る」ことが大事

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■日本とアメリカのプレゼンスタイルの違い

 先日、アメリカのとある業界の会合に出た印象を書きました。英語はやはり大事だなと。出来て困ることはないと断言できるので、日ごろから研さんを積んでおくときっと活かせる場面が出てきます。それを改めて実感しました。

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 もう一つ感じたのがプレゼン力です。日本語の同通は入りましたが、筆者のように業界にも専門用語にも精通してなければ、理解度は察するに余りあります。それでも演台を離れて堂々とリスナーと向き合ってプレゼンする姿はとても手慣れた印象を持ちました。

 

 「手で持つマイクではなくハンズフリータイプを使用」、「スライドに文字は控えめ」。この二つが特徴でした。日本ではポディウムに置かれた固定のマイクで手元のPCを見ながらプレゼンを進めるスタイルが大半だし、プレゼンターのスライドも文字情報が必要以上に多い印象です。

 

 このようにプレゼンスタイルとそつないスライドは学ぶべき点は多い反面、話している内容は必ずしもそれに追いついていないとも感じました。筆者のように、英語力や業界精通度に難があるような人には特に。

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■プレゼンを相手に届けるには「体験を語る」ことが大事

 世界からいろんな人が集まっているわけだから、どんな人にも何か印象づけられるようにするとよりプレゼンが際立つのではないかと思います。簡単なようでもちろん難しいわけですが。

 

 会合の最後の日にNASAの女性宇宙飛行士の講演がありました。この方の話が一番面白かった。宇宙船の中ではくしゃみは禁物だとか、母親が作ってくれたバースデーケーキを宇宙船内で食べようとしたら誰かに食べられてしまったとか。

 

 「宇宙飛行で最も危険な局面は?」との問いに、「三つある」と前置きして、「一つはテイクオフのとき、二つ目は帰還時、そして三つ目はその間全て」とウィットに富んだ答えをしたり。

 

 やはり体験に基づく話は聞き手の関心を大いに引き出す、とここで感じました。専門分野のことを話す時もできるだけ話を分かりやすく、そして他人は経験できない自身の体験を混ぜるとより話がイキイキすると思います。

 

 自身の体験は臨場感をもって人に伝えられる代えがたいものです。プレゼンテクニックはさておき、体験の引き出しはいろいろ持っておけば、聞き手の気づきにつながることもあるはずです。

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